アマチュアスポーツ競技の進行にエンターテイメント性が必要か?フェンシングの全日本選手権の変化から考えてみた。

アマチュアスポーツ競技の進行にエンターテイメント性が必要か?フェンシングの全日本選手権の変化から考えてみた。という記事を書きます。

(画面キャプチャ:Number WEBのフェンシング協会 太田雄貴会長の記事より http://number.bunshun.jp/articles/-/829745


近年、バスケットボールのBリーグだったり、2018年秋からスタートする卓球のTリーグなど、アマチュアスポーツがプロ化、プロリーグ化する流れが起こっています。


これに続けとバレーボールのプロリーグ構想などもありますが、今回は、そうしたアマチュアからプロ化する競技の話ではなく、


まだアマチュアスポーツのままであるフェンシングの、昨年12月に東京の駒沢体育館にて行われた全日本選手権の変化を例として、アマチュアスポーツ競技の進行にエンターテイメント性が必要か?について考えてみたいと思います。


昨年12月の全日本フェンシング選手権を現地観戦することができました。

(Photo by 2tomman 第70回全日本フェンシング選手権より)


まず、最初に、アマチュアスポーツ競技の進行にエンターテイメント性が必要か?の一つの問い。


ざっくりいうと、プロリーグなど、プロ化されていないスポーツのアマチュア競技の大会で、観客を楽しませる、いわゆるエンタメ視点での演出が必要か?という議題があります。


スポーツに関わる方、観客として応援に行く方、それぞれの視点があると思いますが、


一つの視点として

アマチュアといっても、競技は競技なのだから、観客の楽しみは必要なく、競技の進行を優先して考えるべき。(特にアマチュア競技なのだから、演出なんて必要ないのではないか?)


という考え方があります。


一方で、

いやいや、アマチュア競技とはいえ、観客が大事なのだから、観客が喜ぶ演出をすべし。

(そこはアマチュア競技だとしても言って観客に楽しい時間を過ごしてもらう工夫は必要)



と2つの意見があります。

(あえて2つの相反する考えを書いてみました)


実は、こうした問いは、肌感覚では、あちこちの競技団体や競技運営者の間でも起こっていることと思います。特にアマチュアの競技団体に関しては、最近、こうした議題が上がりつつあるのではないでしょうか。(いや、エンタメ化の流れは、プロスポーツでも同じかもしれないですね)


で、この点については、僕の中で、結論があります。


エンタメ視点はとても大切である。来場した観客アマチュアスポーツ会場でも楽しむもの。


ただし、この問いの答えは、白黒じゃない場合もあり。ケースによっては、グラデーションであって、その競技が、おかれている状況として判断すべきもので、はっきり白黒つけられるものではない。と言うこと。

(言い訳っぽいですけれども、競技によっては、まだそこに取り組むべきじゃない、というケースもあると思います)


という意味で、大会の進行、会場装飾(観戦エリアなど空間づくり)など、それぞれ具体化した項目を、それぞれ白黒つけて行った結果、全体としては、色が混ざったグラデーションになる。ゆえに、是々非々で判断すべきでは、というのが僕の意見です。


全てをエンタメ視点でブラッシュアップを行うことも大事ですが、その競技が置かれている環境から、まだそこに力を入れるべきでないフェーズの競技もあるでしょう。


ただ、今回事例にあげた昨年12月に行われたフェンシングの全日本選手権は、非常に抜本的な取り組みを行いました。すごいんです。



何がすごいかと言うと、大会のスケジュールを抜本的に見直したこと。


全日本選手権で、観客を集める日、いわゆる集客をする日を設けるために、競技日程から抜本的に見直したのです。


どういうことかと言うと、通常であれば予選から決勝まで一気に行われる形式だった全日本フェンシング選手権を、第70回全日本フェンシング選手権に関しては、最終日の観客を集める日は、決勝戦(3種目の男女計6試合)だけの興行とし、準決勝までは前日までに終わらせた。


決勝戦だけでの興行としたのです。


アマチュアスポーツではかなり珍しい取り組みではないでしょうか。


ただ、プロスポーツのボクシングなどでは、こうした形式は一般的ですよね。


例えば、ボクシングの世界戦のタイトルマッチを軸とする興行は、チャンピオンを決める戦いがその興行の柱になります。


それと似た形で、従来型の、予選から決勝まで一気に行われる形式を辞め、観客を集めて、決勝戦(3種目の男女計6試合)だけの興行に変えたのです。観客を集める日(チケットを販売する日)は、完全に観客を楽しませるための日としたのです。


そして、この全日本フェンシング選手権のすごいところは、会場を暗くしてステージを設けて、選手たちをライトアップ。ライブ会場のような雰囲気に。サイドコンテンツも盛り込み、隙間時間でも観客を楽しませる工夫を行う。(この空間演出は、世界的にも珍しいようです。by 太田氏より)

フェンシングの現役選手がリズムに合わせて踊る。


協会の会長であり、国内フェンシングの顔である太田雄貴氏自ら、競技説明を行なう。

(競技の分かりにくいさを、しっかりと説明を入れる)

(Photo by 2tomman 第70回全日本フェンシング選手権より)


フェンシング協会が、第70回全日本フェンシング選手権で取り組んだ大きな転換

・最終日の試合はフェンシングの決勝戦(3種目の男女計6試合)だけの興行とした

・会場を暗くしてステージを設けて、選手たちをライトアップ。ライブ会場のような雰囲気に

・合間にエンターテイメントなコンテンツを盛り込む

・初心者目線に立ち、ルール説明(プレゼンテーション)をしっかりと行った etc..


もっと細かな部分の取り組みを感じましたが、そこは太田雄貴会長のご本人の記事がありますので、そちらを参考にしてもらいたいです。


太田雄貴会長の大仕事、全日本選手権。フェンシング大会でダンスにLED!?

http://number.bunshun.jp/articles/-/829745

この取り組みによって、


このブログの問いである


アマチュアスポーツ競技の進行にエンターテイメント性が必要か?


ではなく、、むしろ国内アマチュアスポーツ競技でも、ここまでエンタメ化出来てしまうのか!ということを感じさせられた瞬間でした。


そして、こちらの映像...

会場の熱気がすごかった。


男子フルーレ決勝で、西藤俊哉選手が松山恭助選手に、8得点ビハインドの劣勢から大逆転で決勝を制す。14対14に並ぶ瞬間から勝利が決まる瞬間までの映像です。大歓声に包まれる中で西藤選手の驚異的な粘り強さに感動した瞬間。


8点のビハインドを逆転したのです。割れんばかりの歓声。臨場感がすごい。やっぱりスポーツはこうじゃなきゃ、と思わされます。


大勢の観客が見守る中でのスーパープレイ。選手たちもいつも以上に気合いが乗ったのではないでしょうか。


と、ここまでフェンシング協会が、第70回全日本フェンシング選手権の事例を取り上げさせてもらいましたが、どのアマチュアスポーツ競技も、現状、おかれている状況によって課題であったり、取り組めることも変わってくると思います。


ルールや進行に関しては、競技として、きっちり定めるべきですし、はっきりすべきところがあるでしょう。ただ、観客視点でみたときに、変えられる部分、かつ観客が喜ぶレギュレーションや進行の方法があるならば(フェンシングであれば、観客を集める日は、決勝戦3種目の男女計6試合だけの興行とするなど)変化にぜひチャレンジすべきなのではないかと考えています。


プロスポーツとなりますが、Jリーグ & Bリーグ初代チェアマンの川淵三郎氏は、スポーツの競技の評価の基準は「観客動員」が全てと言い切ります。


どうしたら「観客動員」が最高値となるのか。そこに向けた視点として、どうやって競技にエンターテイメント性を盛り込むべきか。


関わるYBP PROJECTでも、こうした「観客動員」の視点で、どうエンターテイメント性を高めていくのかを考え、形にしていきたいと思っています。

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